立川談志「人生、成り行きー談志一代記」

カテゴリーは「落語」にすべきか「読書」か迷うところです。作家だか演芸評論家だかの吉川潮が聞き手で、談志へのインタビューによる一代記です。

芸とか芸術は突き詰めると人間の生き方そのもので、それに共鳴できるかどうかでその人の芸や芸術が好きか嫌いか分かれることが多いように思います。談志は志ん朝亡き後、当代最高の落語家との評判は高いですが、その意味で私自身は余り彼の落語を好きではありません。もっともここ10年はまともに彼の落語を聴いたことも無いのですが。多分あの生意気さ、自己中心的な考え方、自分で上手いと思っている高慢さが、頭の明晰さやシャイなところからきているのは判るのですが、彼の落語の魅力を大きく損なっているように思います。

でも談志の、落語はもとより芸能全般に関する評論・批評は超一流で、大昔の名著「現代落語論」以来ファンではあるのですが、その点博覧強記の彼によるいろんな芸の話、芸人の話が満載のこの本は面白く充実しています。テレビの長寿番組の「笑点」は、談志、前田武彦、三波伸介、円楽、歌丸等、何人も司会者が代わりましたが、圧倒的に談志が司会の頃が面白かったと言えます。つまらない駄洒落やゴマスリや楽屋落ちでは絶対に座布団を貰えませんでしたが、今はそればっかりです。出演者も落ちているし(特にたい平、好楽がお粗末、楽太郎も中途半端)、聴き手の質も落ちているから仕方ないのですが。(ところで、この本の中で「で笑」点の初代司会者は円楽だったと談志自身が語っています。)

この本ではないですが、以前読んだものの中で談志が漫才師を批評していたのですが、「中田ダイマルラケット」と「いとしこいし」を比較して、『狂気がある分「ダイラケ」の方が面白い、』と評し、私は感心したことがあります。私自身「ダイラケ」の方が「いとこい」より面白く、でもその差は何だろうと疑問だったのですが、談志が見事に解き明かしてくれました。「いとこい」の方が常識的で破目を外さず、スマートでお行儀が良いのですが、それを一言「ダイラケの狂気」の面白さ、と言い切ったのには感心させられました。この本はその彼の鋭い視点による芸談、芸人談が満載です。

関係ないですが、昨夜(6/26)8時過ぎに帰宅し、女房や娘が見ていたお笑い番組のコントを少し見ましたが、とてもお笑いとは言えないレベルの低い素人芸でした。それを何人かのタレントがゲラゲラ笑っているのですが、伊東四朗までその中におり、司会は堺正章。何とも情けないことです。「こんなのは面白くないし、芸でもない」と二人とも思っているに違いありません。こんな安直でお粗末な番組に出ること自体、彼らにとって不名誉なことで、残念でなりません。
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by nakayanh | 2008-06-27 02:01 | 読書