日経「私の履歴書・谷川健一」

5月の連載で、もう終わってしまいました。民俗学者として名前くらいは存じ上げていたものの、業績や偉大さは全く存じ上げませんでした。長年の習性で履歴書は毎日読みましたが、いまいちピンと来ませんでした。何となく平凡社に入ってサラリーマンになり、編集をしているうち何となく学者になっていた、という印象であまりインパクトを感じませんでした。趣味が高じて学者になったというか、学者としての立脚点が良く判らず、業績もご本人が強調されるほど、社会にインパクトが有ったとは思えませんでした。多分私の無知、浅学非才が故だとは思っていましたが。

と、ひと月思いつつ月末を迎えましたが、月末の最終項「独学者の魂」はなかなか読ませました。「(吉田東伍、宮本常一、柳田国男、折口信夫、白川静ら)独学者の特徴は『「他人の真似をするのが大嫌い』で世間のありふれた賞賛には目もくれず、光栄ある孤立の道を選ぶことをためらわなかった。」、「孤立しているが、世の独創的な発想や研究は自分で学び、自分で考えることからしか生まれない」、「民俗学はもっとも文学に近い学問と信じているが、現在の民俗学者が歌心をもっていないということは、文学としての民俗学を捨てることを意味する。」云々。自信と信念を持った人の書く文章は無駄が無く、研ぎ澄まされていて、それが心地良いリズムを生み、美しく感じます。同じく孤高の学者であった白川静さんの文章に通じる高潔な印象を受け、最終回にしてやっとこの方の偉大さの片鱗に触れたような気がしました。我ながら鈍いことです。
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by nakayanh | 2008-06-05 01:43 | 読書