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日経日曜版・美の美「俵屋宗達」

今日4/20の日経18,19面に出ています。

三島由紀夫が宗達の「舞楽図」を評して、「剛毅な魂と繊細な心とが、対立し、相争うたまま、一つの調和に達してゐる。装飾主義をもう一歩といふところで免かれた危険な作品。芸術品といふものは、実はこんな危険な領域にしか、本来成立しないものだ」、難しく大層な表現ですが、宗達を評価し、特に「舞楽図」を第一に評価している点では、私と同じなのです。渋沢龍彦という方も「かつて日本の絵画が表現しえた、最高の詩といってもいい」との賛辞を寄せているそうです。全く同感です。この絵は、全体を見渡しては細部を見、その繰り返しで見飽きることがありません。踊る人々の喜びが伝わり、音楽が聞こえてきます。素晴らしいデザインと構図、その細やかさは同じ宗達の傑作である国宝「風神雷神図」を凌いでいると思います。「風神雷神」が国宝で『舞楽図」が重文とは、文化庁(今は文部科学省?)の目を疑いますが、まあお役所仕事はそんなものでしょう。

芸術の良さは、何かで知識を得たり学んでもそれは参考に過ぎず、結局自分で本当に感動するしか理解したとは言えないと、常々思っています。各々が自分で「発見する」しかないのです。私は醍醐寺で「舞楽図」を観て感動で立ち尽くしましたが、似たような感動を三島由紀夫がしていたとしたら、ちょっと嬉しいことです。三島由紀夫が特に好きという訳ではありませんが、それでも宗達について、あれ程の方と似通った感情を抱いたというのは、自分の審美眼が少し裏付けられたような気がして、自信にもなります。勿論三島が貶していたとしても、「彼は意外に判ってないな」と思ったでしょうが。
by nakayanh | 2008-04-20 23:45 | 美術