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漱石の「こころ」その3

真夜中、先生は友人が自殺したのを知ると、机の上に遺書があるのに気付き、震える手で封筒から出し、内容を大急ぎで確認します。自分のことを悪く書いていないか、自分のせいで自殺に至ったと書いてないか。そんなことが書かれていないことを確認し、安心して遺書を元の位置に戻し、それから下宿のおばさん達を呼びます。この心理描写、もし自分がそういう状況に陥ったら、同じ事をするに違いない、心の奥底を完全に読まれているような恐ろしさと快感、凄い小説、凄い作家だと感服せずにはおれませんでした。

「草枕」「それから」「門」「行人」「明暗」、いろんな男女の愛のパターンを描いていて面白い。女性の心理を描ききれているのかどうか、私には判りませんが、男の心理をこれほど描けている作家を私は知りません。そして「猫」の会話の面白さ、英語、漢文、東西の歴史、故事来歴等、幅広く豊富な知識を駆使しての漱石山房サロンの楽しさ。面白くて読み進むのが楽しい本は良くありますが、残りが減っていくのが惜しいと思った本は「猫」が最初でした。尤も、初めて読み切ったのは40歳近くになってからで、それまでは何度も最初の数ページで挫折していました。

「こころ」のことを書く積りが長くなってしまいました。漱石については他にも書きたいことはありますし、彼の俳句も大好きですが、又の機会にします。。最後までお読みくださった方お疲れ様でした。
by nakayanh | 2007-08-12 01:04 | 読書