人気ブログランキング | 話題のタグを見る

漱石の「こころ」その1

日経のコラムに出ていましたが、新潮文庫の過去の累計売り上げベストセラーは漱石の「こころ」だそうです。へー、そんなに人気あるのか。私も漱石は大好きですが、これ程の人気と走りませんでした。日本人も捨てたもんじゃない、とても良いことだと思います。

初めて「こころ」を読んだのは高校生の頃でした。当時通っていた学校の何年か前の校内誌に好きな小説のアンケート結果によるランキングが出ていて、漱石の「三四郎」や「こころ」や「猫」が上位にありました。他には島崎藤村(藤村とうそんではありません)の夜明け前や志賀直哉の暗夜行路等が並んでいたでしょうか。好きな小説家のランキングでは圧倒的に漱石がトップでした。それで「こころ」を読んだのですが、何と暗い小説だろうと思い、どこが良いのかさっぱり判りませんでした。でもあれだけ多くの人が良いと言うのだから、何かあるのだろう、つまらないのは自分に読解力が無いからだろうと思い、他の漱石の小説も読み続けて行きました。そして大学4年の時、ある日突然漱石が判ったのです!

芸術と言うのは不思議なもので、小説に限らず、音楽でも絵画でも初めから良いと思う作品、作家もありますが、最初はどこが良いのか判らず、でも判らないなりに鑑賞を続けていると、ある時突然判ることがよくあります。それを作った芸術家の心情が自分なりに理解できた、というのでしょうか、一つ作品でそれを感じると、その作家の作品全てが判るような気がします。

僕にとって漱石を始めて理解できたのは「彼岸過ぎまで」という小説でした。それは本当に突然のことでした。夜中、四畳半の下宿の布団の中でつまらないなと思いながら「彼岸過ぎまで」を読んでいた時のことです。(すみません、話が長くなるので、続きは今日中に書きます)
by nakayanh | 2007-08-11 06:29 | 読書