中山千夏「蝶々にエノケン」他

講談社刊、副題は「私が出会った巨星たち」、去年10月初版です。
著者は私より1歳上の1948年生れ、天才子役と言われ「がめつい奴」
等50年位菊田一夫の舞台で大当たりをした人ですが、後に女優を
辞め、ウーマンリブ活動をしたり、参議院に出たり、フォーク調の歌で
ヒットを飛ばしたり、今は文筆業だそうで、才女の名を欲しいままにした
人です。私も子供の頃テレビ中継の「がめつい奴」を見て、その演技の
上手さに舌を巻きました。

その彼女が子役から娘になるまでの芸能活動中に出会った芸人、役者、
俳優、歌手達パフォーミングアーツの世界の人々の印象や思い出を
纏めた本です。子役だけに大スター達とも気楽に交わることが出来た
ようで、幅広いスター達の一側面が描かれています。

私は学生の頃秋田実や香川登志雄に憧れ、漫才作家になりたいと
思ったこともある位で、こういった芸談や自伝、芸人の評伝等を結構
読んでいます。共演した立場で大物スターを色々書くというのは
なかなかの企画で、今時千夏さん位しか素顔の蝶々やエノケン、森繁、
円生、緑波を語れないでしょう。その意味では貴重な資料と言えます。

ただ、子役として付き合った範囲での記憶を基にしたもので、人選には
偏りがあるし、かなり自意識の強い子供の頃の著者の目を通した対象
人物ですから、一面的でバランスを欠くようなところも散見されます。

例えば、彼女は東宝系の舞台が中心だったので、大阪時代は松竹系の
芸人と殆ど接触がありません。また三木のり平等と一緒に出ていた
若き日の志ん朝とも共演していますが、落語家ではあっても名人である
ことを志ん朝が亡くなる迄知らなかった、なんて信じられない位勿体ない
話もあります。

才女が故に女優に留まらず、幅広い活動を続けてきたともいえるし、特に
美人でも歌がそれ程上手い訳でもなく、方向転換したのは正解だった
様にも思えます。それと共に、昔共演したスター達と殆どそれ以降接触
しておらず、子役とスターの付き合い以上に発展しなかったのが勿体ない
ようにも感じられます。
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by nakayanh | 2012-02-27 23:43 | 読書