藤岡靖洋「コルトレーン ジャズの殉教者」

岩波新書発行。著者は1953年生れ。呉服店経営を正業とするコルトレーン研究家だそうです
から、言ってみれば呉服屋の旦那の余技ではありますが、家業は殆ど任せっきりで大好きな
コルトレーン研究に全力を注いでいる方と見えます。何度もアメリカの各地に行き関係者に取材
して調べ上げた材料を、コンパクトに纏めて読み易い好著と言えます。

マイルス・デイビスは私もかなり嵌り、70年以降のフュージョンっぽいのまで含めて全時代の
音楽を聴き、何度かライブも聴き、自伝や伝記も読んだので、それなりに理解しているつもり
です。しかし67年に40歳で亡くなったコルトレーンは、生で聴く機会もなく、ジャズ界の
偉人だとは思いますが実感は出来ていません。CDは主要なもの10枚くらい持っていますが、
本当に理解出来ていると思うのは有名な「バラード」だけです。これは本書によればインパルス
と言うレコード会社に移籍直後に商業観点から作成したスタンダード曲集で、判りやすい上に
コルトレーンがリリシズム溢れる音色で切々と歌い上げる素晴らしいアルバムです。これを
聴き込めば、特徴のあるコルトレーンの音色は他のCDでも直ぐに判るようになります。

「平和と愛」を求め、聖人になることを目指していたコルトレーンですが、若い頃の酒と麻薬が
祟って肝臓癌で急死したため、当然自伝も残しておらず、彼の本質を理解する足掛かりもあまり
なかったのですが、その意味では本書は改めてコルトレーンを聴き直す良いきっかけになりそう
です。
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by nakayanh | 2011-05-26 09:05 | 読書