杉本秀太郎「洛中生息」他
ちくま文庫刊です。今は発売されておらず、アマゾンで中古本を買いました。
元々みすず書房から1976~79年に出た「洛中生息」、「続・洛中生息」を纏めたものです。
著者は有名な京都の旧家、呉服商の家に育った生粋の京都人で仏文学者、文芸評論家であり、
この本でエッセイストクラブ賞も受けています。PHP新書刊槇野修著「京都の寺社505を歩く」
で紹介していて知りました。
如何にも京都の旧家育ちのエリート文学者らしい繊細且つアンニュイな雰囲気が全編に漂って
います。ブームになる前の京都の荒れた寺社、開発による古い街並みの崩壊を嘆く場面が
多く、例えば因幡薬師(平等寺)のように今はかなり整備されている場所もあって、読んでいて
意外に思う個所もあります。私など今の京都しか知りませんから、良いも悪いもそれを受け入れ、
そこからいにしえを想うしかありませんが、多少は文化財保護がされてきた今の京都を著者が
見たらどう思うでしょうか。アーケードや地下街にも否定的ですから、今の京都駅等見たら
卒倒するかも知れません。私個人としては建築の規制だけでなく、自家用車の市外からの
乗り入れを禁止し、地下鉄・バスの本数を倍にすれば良いと思うのですが、自然が売り物の
上高地と違って、町全体が文化財であると共に、生きた経済都市でもある京都でそうはいかない
のでしょう。時代と共に変わる部分もある中で、何をどのように守っていくか難しい問題です。
いずれにせよ、一世代前の京都の姿を伝える貴重な書物であり、壽岳章子の京都シリーズ三部作
同様、文庫版で再刊すべき価値ある本だと思います。壽岳さんのシリーズは現状2冊目の
「京に暮らすよろこび」までが角川ソフィアから文庫で出ているようです。
松井今朝子「三世相」角川刊。並木拍子郎種取帳シリーズの第三巻です。古くは銭形平次や
半七、鬼平や最近の御宿かわせみ等と同じようなスタイルですが、八丁堀同心の次男坊で
歌舞伎作者並木五瓶の弟子の拍子郎と小料理屋の娘おあさとの仄かな恋、師匠五瓶・小でん
夫婦との掛け合いが面白く楽しめます。著者には銀座開化シリーズもありますが、どちらも
気に入っています。もう少し頻繁に出してくれると良いのですが、一方で時代物の大作を
コンスタントに書きながらだから、読者はひたすら次の作品を待つしかありません。
元々みすず書房から1976~79年に出た「洛中生息」、「続・洛中生息」を纏めたものです。
著者は有名な京都の旧家、呉服商の家に育った生粋の京都人で仏文学者、文芸評論家であり、
この本でエッセイストクラブ賞も受けています。PHP新書刊槇野修著「京都の寺社505を歩く」
で紹介していて知りました。
如何にも京都の旧家育ちのエリート文学者らしい繊細且つアンニュイな雰囲気が全編に漂って
います。ブームになる前の京都の荒れた寺社、開発による古い街並みの崩壊を嘆く場面が
多く、例えば因幡薬師(平等寺)のように今はかなり整備されている場所もあって、読んでいて
意外に思う個所もあります。私など今の京都しか知りませんから、良いも悪いもそれを受け入れ、
そこからいにしえを想うしかありませんが、多少は文化財保護がされてきた今の京都を著者が
見たらどう思うでしょうか。アーケードや地下街にも否定的ですから、今の京都駅等見たら
卒倒するかも知れません。私個人としては建築の規制だけでなく、自家用車の市外からの
乗り入れを禁止し、地下鉄・バスの本数を倍にすれば良いと思うのですが、自然が売り物の
上高地と違って、町全体が文化財であると共に、生きた経済都市でもある京都でそうはいかない
のでしょう。時代と共に変わる部分もある中で、何をどのように守っていくか難しい問題です。
いずれにせよ、一世代前の京都の姿を伝える貴重な書物であり、壽岳章子の京都シリーズ三部作
同様、文庫版で再刊すべき価値ある本だと思います。壽岳さんのシリーズは現状2冊目の
「京に暮らすよろこび」までが角川ソフィアから文庫で出ているようです。
松井今朝子「三世相」角川刊。並木拍子郎種取帳シリーズの第三巻です。古くは銭形平次や
半七、鬼平や最近の御宿かわせみ等と同じようなスタイルですが、八丁堀同心の次男坊で
歌舞伎作者並木五瓶の弟子の拍子郎と小料理屋の娘おあさとの仄かな恋、師匠五瓶・小でん
夫婦との掛け合いが面白く楽しめます。著者には銀座開化シリーズもありますが、どちらも
気に入っています。もう少し頻繁に出してくれると良いのですが、一方で時代物の大作を
コンスタントに書きながらだから、読者はひたすら次の作品を待つしかありません。
by nakayanh
| 2011-01-29 15:08
| 読書