杉浦日向子「食道楽」

新潮社から3月に文庫本で出た本です。杉浦日向子さんが05年7月に亡くなって
4年近く、僅か47年弱の生涯でした。元々漫画家でデビューしましたが、
江戸風俗に詳しい文筆家というのが本来の職業でしょう。でも私が杉浦さんを
知ったのは蕎麦愛好家としてでした。蕎麦ブームの魁を成したとも言える
名著「蕎麦屋で憩う」を読んだのがきっかけです。

「蕎麦屋で憩う」は勿論ジャズのスタンダード曲「A列車で行こう」をもじったもの
でしょうがなかなか粋だと思います。ソバ好き連をもじった「ソ連」は粋とは
思えませんが。

この本は杉浦さんの食と酒に関するエッセイをまとめたものですが、とても楽しめました。
何といっても文章が粋でイナセでカッコいいです。心からお酒が好きだった方で、
それも一人で静かに飲む酒を愛された方のようで、年下なのに憧れます。

「酒(当然日本酒を指します)が、ほんとうにうまいなあ、と思ったのは、30を
過ぎてからのこと。自分の意思で、店を選び、もちろん身銭で、手酌で、ひとり、
たしなむようになってからのこと。
酒が、ほんとうにたのしいなあ、と思ったのは、40代になってからのこと。
呑みたい酒と場所を、TPOにあわせて、ぴたりと、使い分けできるように
なってからのこと。」 全く同感ですが私は杉浦さんよりどちらも10年ずつ
遅れています。憧れる筈です。

巻末にカメラマンのお兄さんが杉浦さんの思い出を書いています。
杉浦さんの生い立ちや主に漫画家としての側面が、愛情のこもった
肉親の目で描かれていて楽しめました。

人生の達人とも言える見事な方で、若くして亡くなったのは本当に残念です。
10年以上も病気持ちだったそうですから、40歳での隠居宣言は、ご自分の
余命の短さを感じておられたのかも知れません。「闘病」が嫌で病気と付き合い、
無理のない「平癒」を目指しておられました。

「腕白でもいい、逞しく育って欲しい」というCMが有りましたが、私はずっと
自分の子には「逞しくなくてもいい、腕白でなければ」と思っていましたので、
杉浦さんの生き方が良く理解できるような気がします。
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by nakayanh | 2009-05-23 08:45 | 読書