「上方演芸大全」

大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)編、創元社。この11月20日第一版第一刷発行の2800円の大著です。上方のお笑いに関する歴史や資料がふんだんに収められていて、なかなかの力作、労作です。懐かしく貴重な写真も数多く掲載されています。

内容は漫才、落語、喜劇、浪曲、講談、諸芸の分類で書かれ、更に上方演芸とメディア、作家・裏方、劇場・寄席・小屋についてまで各一章を設けて書かれています。芸人から作者まで名鑑も詳しく貴重な資料で、「演芸」ファンとしては実に嬉しい企画です。

示唆に満ちた記述も多く、例えば漫才の章「姿を消した熟成の芸」の項で『笑いの鮮度を保つために、テレビは芸よりもキャラクターを求め、芸人の新陳代謝が激しくなった。漫才は漫才という形態の維持すら危うくしつつ、笑いを模索して電波の中を遊泳している。』とあります。本当にその通りだと思います。喜劇の項で藤山寛美の師匠ともいえる二代目渋谷天外は「これからの喜劇がどうなるか。」と問われて「これからの世の中、どうなります?」と聞き返しています。昭和30年代後半のことだそうです。喜劇は社会情勢で変化する、だから将来の喜劇など判らない、と言っている訳で、稀代の名喜劇作家で松竹新喜劇の座付作者だった天外の鋭い洞察には感動します。

この本を編集した方達も、笑いや演芸の将来を憂いつつ、兎も角も歴史と変遷を記録しておかずにはおれなかったのでしょう。良い企画の好著、名著と言えます。もう一回り大きい編集でも良かったくらいです。

編集した「ワッハ上方」という資料館は大阪難波の繁華街のど真ん中にあり、私のようなお笑い好きには一日入り浸っていたい位の楽しい場所です。
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by nakayanh | 2008-12-21 05:09 | 読書