A.グリーンスパン「波乱の時代」特別版(日経)

前米FRB議長マエストロ・グリーンスパンの「波乱の時代」は、最近の経済関係の本ではベストセラーですが、そのペーパーバック版が出版される時に付け加えられた後書きが、税抜き500円で売られています。原著ハードカバーは07年6月完成、9月出版、日本語版は11月に出版されました。ペーパーバック版は08年6月に印刷とありますから、この後書きが書かれたのは今年の5~6月頃でしょう。

後書きだけを一冊の本にして売ると言う商魂も凄くてえげつないですが、中身はそれだけの価値はあります。6月だと未だリーマンの倒産等今回の未曾有の金融危機のクライマックスは起こる前ですが、既にグリーンスパンは今回の状況が50年か100年に一度の事態と言い切っています。彼の文章は、FRB議長の頃の議会証言でもそうでしたが、本当に味があります。それは多分彼が虚心坦懐に思ったままを正直に語っているからなのでしょう。彼は金融マーケットを知り尽くした人であり、私も多少なりとも金融マーケットで仕事をしていたことも関係あるかもしれません。はったりのない、率直で人間の心理についての洞察力に満ちた言葉には感動を覚えます。

例えばこうです。「(景気の)拡大局面に金融市場にあらわれる無茶な行動の多くが、リスクがとんでもなく割安になっていることに気付かないためではなく、今の市場の陶酔に背を向けていれば、市場シェアを失って取り返しが付かなくなると懸念しているためのものだという点である。・・・」人間の心理をよく読み切った意見で感心します。生きたマーケットを相手にしてきた彼ならではで、机上の論理が中心の経済学者にはなかなか言えないことの様に思います。「判っちゃいるけど止められない。」、スーダラ節にも通じ、親鸞にも通じる人間の業そのものを語っているとも言えます。だから人の心を掴み人を魅了させるのでしょう。凄い人だと思います。
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by nakayanh | 2008-11-14 22:20 | 読書